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グリコヘモグロビン値では、標準偏回帰係数は疾病頻度尺度が0.349と最も大きく、ついで糖分尺病0.191、年齢0.173、食事規則性尺度-0.133の順であった。すなわちグリコヘモグロビン値は疾病頻度が高く、年齢が高く、糖分摂取頻度が低く、食事の規則性が低い群で高くなる。
? 考察
1.対象について
本調査対象は農漁村と都市の中高年婦人のみとした。これは、小町ら(1976)がすでに指摘しているように、集団における総コレステロールの平均値を論ずるとき、各集団の居住地の地域差を考慮する必要があるためである。さらに女性では、喫煙、飲酒の影響は男性より少なく、栄養素摂取のHDL−コレステロール値、尿酸値への影響を明確化できるためと考えたためでもある。全対象者中、ほぼ毎日飲酒する者は11名(5.3%)、喫煙者は4名(1.9%)のみであった。対象の選択は無作為抽出ではないが、年齢構成に有意差がなく、血液学的検査値等にも正常域内にあり、両者に大きな偏りがないので、分析上はとくに問題はないと考えられる。しかし、白浜町の女性(S群)は本調査に積極的に参加する自立性のある集団であるが、東京友の会(T群)はより広い地域にまたがる目的集団であるという相異はある。
2.生活習慣調査票について
本調査で用いだLPC式生活習慣検査は、循環器疾患への生活習慣の関係を検討するための手段として開発された検査法である(日野原ら1982、佐伯ら1988,Takagi1991)。各尺度の信頼性については、開発の過程で十分に検討されている。さらに、高木ら(1993)は、秤量法による食事調査と質関紙による塩分尺度得点を比較し、食塩摂取量の推定でも妥当性の高いことを報告している。
いくつかの疾患との関連については、道場ら(1988)が報告している。
3.検査値について
血液検査値等の中で身長、体重、血圧値は自己申告値であるため、正確さに問題があると考えられる。しかし、川田ら(1994)は身長、体重、血圧値について自己申告値と実測値との関連で、とくに体格測定値に関しては申告値を利用することに問題はなく、血圧値も平均値であれば集団を十分代表するとしている。したがって、本研究で自己申告値を用いることに支障はないと判断した。
4.生活習慣尺度得点と血液検査値等について
循環器疾患の病因は、個人の遺伝的体質、生活環境や生活習慣であると考えられている(上島1981、橋本ら1988、加藤ら1989)。本研究では、都市に比べ農漁村で、高塩分尺度、義理人情尺度、保守・中庸尺度の得点が高く、これは農漁村の常識的特徴とされているものである。また運動実施尺度は農漁村で低いという特徴が認められた。逆に都市では農漁村に比べ、肉・油脂、洋食の食事、料理への進取性、教養、社会奉仕、運動の実施、外向性、自発性の各尺度得点が高いことが示されたが、これは都市とりわけボランティア活動に参加している女性の特徴と考えられる。
血液検査値等の測定値では都市に比べ農漁村は、肥満度が大きく、血圧は収縮期、拡張期とも高く、尿酸値、グリコヘモグロビン値も高く、HDL−コレステロール値は逆に低いという結果が得られた。高塩分で肥満度が高く、かつ運動に消極的であることが、農漁村の血圧値が都市に比べ高くなることと関係していると思われる。農漁村では肥満度が高く、運動に消極的であったが、逆に都市ではやせており、運動を積極的に行っているという結果であった。これが都市に比べ農漁村でHDL−コレステロール値が低い理由の1つと考えられる。
尿酸値が都市で低い理由として、洋風の食事、すなわちパン、牛乳、バター、チーズ、果物などの低プリン食を比較的多く摂るため(佐々木ら1983)と考えられる。しかし日置ら(1994)の調査では、尿酸値は女性で摂取食品との関連は認めていない。食生活習慣と尿酸値の関連については報告が少なく、今後の研究が必要と思われる。
なお総コレステロール値については、本調査において農漁村と都市に有意差はなかった。梅村ら

 

 

 

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